みんな陰謀論が好き・・・かも

陰謀論は人気
 陰謀論は思いの外,広く信じられているのではないでしょうか。
「あらためて陰謀論は連鎖する」
http://transact.seesaa.net/article/386180675.html

 少し考えれば荒唐無稽と判る陰謀論に嵌るのは,特殊な人ばかりではないような気がします。上記リンク先の調査では,1/4から1/2もの人が陰謀論を信じていますが,私が見知っている人にそれほど高い率で特殊な人はいません。百人に一人くらい癖の強い人はいますが,殆どは普通の人です。他の面では理性的な判断が出来る優秀な人でも,陰謀論を信じていたりします。あくまで,私の経験による推測でちゃんとした調査ではありませんが。

■ありふれた感情と行動
 読者の皆さんは以下に示す事柄をどのように感じるでしょうか?

・勧善懲悪ドラマにカタルシスを感じる。(越後屋は陰謀を画策する。)

・公務員批判を良く行う。(公務員は悪徳業者と連んで陰謀を巡らす。)

・政治家は信用出来ない。(政治家は権謀術策を巡らす。)

・事故の責任追及は必要だ。(どの業界も利益優先で手抜き,安全軽視,偽装が横行する)

薬害エイズ安部英が有罪にならなかったのは納得できない。(白い巨塔では権力争いが渦巻いている。)

・日本の町工場の製品が世界で大きなシェアを占めているのは誇らしい。(大企業は消費者に嘘をつき,欠陥商品を売りつける。)

・顔の見える農家の作物は安心だ。(有害な肥料を使う大農家の農産物は危ない。)

・酒の席での芸能人の裏話がすきだ。(芸能界は虚構の世界だ。)

・会社の上司の悪口が酒の肴だ。(上司は自分の出世ばかり考えている。)

・井戸端会議で,ご近所さんの悪口で盛り上がる。(ご近所さんも,影で何をいっているか判らない。)

・弱者,庶民にシンパシーを感じる。(強者は弱者を搾取している。)

■不運は怖い
 以上の感情は,状況設定が私個人と異なる場合を除き,概ね私にも当てはまります。このような感情を抱くのは,後半の括弧書きのような不都合な事実が時々発生するからです。ですが,不都合な事実が悪意の陰謀の結果ではなくて,誰が悪いのでもないたまたまの結果ということもあります。

 私が最も恐ろしいと感じるのはたまたまの不運です。なぜなら,たまたま運が悪いだけなら,怒りの矛先を向ける相手がいません。犯人がいてくれれば,そいつを叩くことで気分が少しは晴れますが,運が悪いというのは対処しようのない恐怖です。

 ところが,現実にはドラマに出てくるような悪人はそうそう存在しません。渡る世間は鬼ばかりのように感じるのですが,多分,自分は平凡,平均的な人間である確率が高いでしょうから。殆どの人は自分と同じような人間と考えた方が良さそうです。でもそうなると不都合な事実の対処は自分にも及んできます。

■陰謀を感じる本能
 群れを作らない一匹オオカミのような動物は,すべての行動の責任は自分だけで,仲間の意図を考える必要がないはずです。敵の行動や自然の現象を予測する必要はあっても,意図を考える必要はありません。それに対して社会的動物は,仲間と協同して行動しますので,仲間の裏切り,悪意は生存していく上で極めて大きな障害です。そのため,仲間の悪意に敏感に反応するようになったのではないでしょうか。

 その結果,仲間の気持ちを察して共感し,結束を強める事もあれば,仲間に対して,お前の企みなどマルっとお見通しだという信号を発することで,悪意や陰謀を抑制するような高度な駆け引きを行うようになったのではないでしょうか。一匹オオカミがこの様な信号を発しても何の意味もありませんが,社会的動物では大きな効果を及ぼしそうです。生物学的な根拠があるわけでもなく,単なる憶測ですけどね。

 存在しない幽霊を確かに感じる様に,陰謀論も本能で感じる錯覚だとすると,知識や教育が必要です。希で特殊な人の戯言なら放っておいてもよいのですけど。