公法(公共性)と私法(契約)がゴチャゴチャ

 テレビが無いと嘘をついて受信契約を結ばなかったら詐欺になるのか,というQAです。
 
http://www.bengo4.com/qa/2553/

 ポイントは回答の次の部分かと思います。

,テレビをアンテナに接続して設置した者には,放送法32条によって,NHKと受信契約を結ぶ義務が課せられています。しかし,この受信契約を結ぶ義務は,受信設備設置者が国に対して負う義務(公法上の義務)であって,受信設備設置者がNHKに対して負う義務(私法上の義務)ではないと考えられています。

 確かに,テレビを設置した者は,契約を結んでいない段階では,NHKと全く私法的な係わりがありませんね。にもかかわらず,NHKに対して義務を負うというのは不可解でしたが,国に対して負うわけですね。これなら分からないこともありません。

 となると,契約を結べという訴えは,NHKが行う事は出来ず,国が行う事になるので,NHKに対する詐欺にはならないだろうと言う回答です。

 じゃあ,放送法32条は一体何の為あるのだということになります。国への義務(契約を結ぶこと)違反の罰則はないし,NHKに対する詐欺(受信料不払いの損害を与えた)にもならないのですから。

 しかし,ことは,そう簡単ではないようです。

「受信契約の締結を免れたことにより,受信料の支払い義務を免れた こと」を,一連のものとして考えれば,「財産上の利益が移転した」とも,考えられます。

 詐欺になる可能性もあるらしいです。ただ,この判断には,条件が必要ではないかという気がします。例えば,特定の政治家に献金しなければならないというような他の法律に抵触したり憲法違反の悪法であっても,従わなければその政治家に損害を与え「財産上の利益が移転した」ことになります。その法律自体に問題がないことが必要でしょう。

 とは,思いますが,NHKが受信料を得ることには問題が無いと仮定します。そうすると,詐欺罪で有罪になる可能性もあることになります。

 もし,有罪になったとすると,損害と見なされた受信料を払わなければいけません。しかし,契約はしていません。NHKは契約しろという訴えは出来ませんからね。
つまり,契約しなくても受信料は払わなければいけないと言うことです。
この場合も,じゃあ契約ってなんだ,放送法32条は一体何の為あるのだとなります。

 要するに,放送法32条がおかしいのだと思います。公法上の国に対する義務ならば,私法上の契約の出番は無いわけです。当事者の合意に基づく私法上の契約を国が強制するというのが奇妙です。ですからどのような判断をしても,何処かで矛盾が出てきますね。