歩幅

 中学生の頃,陸上部の顧問の先生から次の様に言われました。
「足先はまっすぐ前を向くようにしろ。がに股で足先が外に開いていると,歩幅が短くなってしまう
。わずかの違いだが,長い距離ではこれが効いてくる。」

 図で示すと,以下の様になります。

 なるほどと思い,真面目で努力家の模範的生徒であった私はアドバイス通りに努力し,記録をグングンと伸ばしました(ウソ)。ゴミもつもれば山となるというお話です。

 というような月並みな教訓を言いたいわけではありません。ずっと後になって,この事をフト思い出し,何か変だと気づきました。賢明な読者は瞬間的にお気づきかもしれませんが,私は気づくまで何年も要しましたよ。

 歩幅は,足のつま先から,その前に踏み出した足のつま先までの距離です。別につま先でなくても,かかとからかかとでも同じです。歩幅に足のサイズは、無関係です。しかし,先生の話が成り立つためには,歩幅はかかとからつま先までの距離でなければなりません。

 私の足のサイズは26センチですが,仮に1メートルあったとしても,歩幅が1メートル以上になることは有り得ません。高齢や病気で歩幅が足のサイズ以下のよちよち歩きの人もいます。何年も気づかなかった私は,なんて馬鹿だったんでしょうか。

 いや私だって,「何処が変でしょうか」と尋ねられれば,瞬間的に気づいたかもしれません。でも,純真な子供(ウソ)は先生を疑わなかったんですね。賢明な人でも疑いを持たなければ,そもそも考えませんから,気づかないかもしれません。なにしろ,世の中は,少し考えれば分かる間違いに溢れています。