番外作戦はうんざり

 sivadさんが、NATROMさんが英語の和訳を間違っているという指摘をされました。

NATROM氏はどこで道をあやまったのか〜2002年、ある分岐点〜
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20130809/p1

 確かに、sivadさんの訳の方がこなれていて上手ですね。NATROMさんの方は日本語になりきっていないように感じます。(私の語学の評価はあてになりませんが)で、それだけですね。両方の和訳ではニュアンスの違いはありますが、内容的に大きな違いがあるんでしょうかね。

sivad訳
化学物質過敏症であるとの患者の訴えや、その疑いがある場合には、そういった訴えを精神的なものとして却下するのではなく、包括的な検査をすることが不可欠である、というのが現在のコンセンサスである。』

NATROM訳
多種類化学物質過敏症だと主張されている、あるいは多種類化学物質過敏症だと疑われている症例においては、訴えを精神的なものとし て見過ごされるべきでなく、完全な検査が必要であるというのが、現在のコンセンサスである。

 患者が化学物質過敏症だと「訴える」のと「主張する」ので何か、大きな意味の違いが生じるのでしょうか。「疑いがある場合は」と「疑われている症例においては」では、ちがいますかね。別に違わないと思います。

 sivadさんの主張の要点は、下記かと思います。

どうもNATROM氏は、claimedやsuspectedという単語を用いているから、化学物質過敏症は否定的にとらえられている、といいたいようです

 この一文から、報告書の執筆者が化学物質過敏症を否定的に捉えているとNATROM氏は判断している。とsivadさんは考えているようですが、そうですかね。報告書全体から判断しているのでは。この文は、化学物質過敏症の評価をしているのではなく、診断上の注意を述べています。先入観や予断をもって判断せずに、ちゃんと検査診断しなさいという趣旨でしょう。当然の注意です。
 sivadさんは、実際上問題にならない違いを殊更に取り上げていちゃもんを付けているようにしか見えないのですが。
 
 もう一点の「thorough workup」の和訳、「完全な検査」と「包括的な検査」では、ニュアンス以上の違いがあるかもしれません。「完全な検査」と言ってしまうと、誤診が全くない完璧な検査と勘違いする人があるかもしれません。例えば「ゴールドスタンダード」を「感度100%特異度100%」の完璧な検査であるとNATROMさんが主張しているとsivadさんが勘違いしているように。もちろん、NATROMさんの言葉足らず(twitter上ではやむを得ない面があります)で誤解されたのだと思いますが。「実際上、感度100%特異度100%とみなす」という意味であると、別所で詳しく述べられています。完璧な検査などないのですから、一番確からしい検査がゴールドスタンダードというだけですね。感度や特異度を計算するための正解が分からないのですから、「感度100%特異度100%とみなす」だけです。
 まあ、現実の検査がどのようなものが知っている人なら、ほぼ100%と完璧に100%のどちらの意味なのかは分かりそうなものですが。どこにも存在しない完璧な検査があると主張する藁人形を攻撃をしているだけではないでしょうか。 

 結局、和訳が下手だという以上の指摘は見受けられません。訳に間違いがあり、NATROMさんの主張が崩れるというような指摘ではありませんから。ただ、NATROMさんの英語の能力の信頼性に疑いを抱かせるという印象操作効果はあるかもしれません。なんだか、どんどん残念な方向に向かっているようです。
 そんなことより、超微量の化学物質で症状が出るという根拠を示し、真正面から議論していただけるとよいのですが。