鈴つけ役への説明

 原発を止めれば、電力不足になるし、間接的に被害者も出るというデメリットは当然あります。デメリットはメリットと比較する必要がありますが、実際に定量的に行うのは非常に難しいです。

 私自身は、廃棄物処理廃炉という超長期の問題を考慮すると、止めるメリットが大きいような気がするのですが、正確なところはわかりません。しかし、せいぜい100年程度の期間なら、止めるデメリットが大きいのではないでしょうか。止めるデメリットが大きいから、日本だけでなく多くの国がやめないのでしょうし、他にほとんど利用法のないウランなどで莫大な電力を生み出せるのですから、石油の有効活用という問題もあまり関係ありません。ただ、原発が石油を使わないかというと、そうではありませんが。既にできている原発なら使った方が得でしょう。

 原発の問題は、総合的にメリットがあるとしても、デメリットを誰が被るかです。ネズミ社会にとって、ネコに鈴を付けることは大きなメリットがあります。ただし、誰が鈴を付けるかという大きな問題があります。鈴つけ役はネコに食われるかもしれませんから。そのことを理解してもらった上で、有志を募るという手はあります。しかし、「大丈夫、安全だ」と説明して、やらせるのは道義にもとります。

 それで、実際は、まあ安全なのですね。これまでも鈴付けは犠牲なしで成功してきました。それに、鈴付け作業は頻繁に行う必要がなく、ほとんどの期間は何もせず安全に暮らせるのです。それに比べ他のネズミは、日常的に作業を行っていて、それが結構危険で、ちょくちょくちょっとした怪我を負います。むしろ鈴つけ役の方が安全で快適な生活なのです。ところが、あるとき間の悪いことに鈴付けの最中に地震でネコが目覚め、かわいそうなネズミは瀕死の重症を負ったのです。有志であったなら「覚悟の上」というところでしょうが、このネズミは「約束が違う」と言うのです。

 多分、約束が違ったのだと思います。なぜなら、その後も同じ約束、つまり「鈴付けには、さらに安全対策を行い、二度とこのような悲劇は繰り返さない」と言い続けているようだからです。