敵の定期便への射撃願いについて

 前島の守備中二日に一回火砲の手入れに行く。外海ソロモン海に面した湾の入口。海抜約50米の崖の中腹に高さ2米椰子木径40糎丸太を載せトタン板を置き、その上土を一米程厚さに被せ椰子の実に芽が出たものを擬装し、砲門も幅広く出来ている。敵の艦砲爆撃に対しては不安であるが、今更追加工事は敵機のため出来ない。
 午前午後敵機定期便は必ず2回以上回って来ては、射撃又は爆弾を落としてゆく。敵機は砲門の下海上すれすれに眼下を通過、飛行士も見える。或時、砲門を一発打てるだけ開き射撃して良いかと小隊長に聞く。「N田が言うことだから撃ち損ないはないと思う。然し撃ち損ないの場合、命中したにしても敵は必ずキエタ付近で消息切れたとし偵察に来る。これは思う所へ艦砲爆撃を受け日本軍にそれ以上の被害が出るよ」と言って不許可であった。