殺気立つ歩兵部隊

 同日夕刻揚陸地点へ火砲荷物その他を取りに行く。中隊の兵40名引率海岸に向かう途中,今晩ムンダへ進撃中の13連隊歩兵と出会う。全員前鉢巻きで相当殺気だった様子に見える。路上途中で引率中の兵が前鉢巻きをした歩兵曹長に突き当たる。曹長は大声で「この兵が俺に突き当たった,だらしなく行進して我々の部隊内に入ってきた。引率者はだれか」と居丈高に呼ぶ。引き返し「どうしたのですか」と聞く。「この兵が俺に突き当たった。行進中の部隊へ突き当たるとはだらしない」と軍刀に手をかけた。「今からムンダ進出,その前祝いにぶち切ってもよいか」と曹長は興奮状態である。小生は「空襲のことも考え道路の両側を行進するよう命じていた。突き当たったことは当方兵にも不注意があったと思う。更めて私よりお詫びします」と言うと「今後注意しろ」と言って立ち去った。ムンダの戦況を聞き海を渡れば尋常ではないと頭に来ていたものと思われた。そのまま「前へ」と命じ揚陸場へ到着する。
 分隊別に梱包弾薬を分類,火砲と共に2000米以上の岡の上高射砲陣地跡迄運ばせた。高射砲はないが,海岸に向かった方は掩蔽壕の土を取り払っている。宿舎も立派で宿舎より陣地まで地下壕を掘ってあり,設営隊の仕事と思われた。