昭和18年7月上旬,ニュージョージア進撃

 我々山砲5中隊も駆逐艦に乗艦。歩兵13連隊等と共に駆逐艦数隻でニュージョージアに向かう。夜の空は真っ暗闇である。コロンバンガラ島近くまで来た時待ち伏せの敵艦隊に出会う。敵は遠方より砲撃してくる。夜間の米軍砲撃は花火打ち上げを見ているようで,きれいに光を曳航してゆく。砲撃も正確で近くの海に炸裂しているが,日本艦からは未だ一発も発射していない。敵艦の砲撃の美しさに見とれて甲板にいた処,海軍より甲板は危険だから艦内に入ってくれと注意され中に入る。然し外のことがなかなか気になる。ドカンという大きな音と同時に艦が横揺れする。今の音は当艦より主砲を敵へ撃ち込んだ為だ等と勝手に話し合う。後刻判ったが敵砲弾が当艦橋に命中,歩兵が10数名の死傷者を出したという。今夜の艦は戦闘でなく輸送が目的であり隠密に行動しなければならない,とは海軍も本当に大変なことだと思った。敵は相当激しく撃ち込んでいたが,我々がコロンバンガラ上陸地点に近づくといくらか静かになった。上陸準備のため甲板に出る。フト煙突を見ると破壊されている。先ほど艦内で聞いたとおり敵砲弾命中,歩兵が死傷者を出したのは事実だった。艦内に避けていてホントによかったと思う。山砲兵の連中も中に入っていてよかったと話し合っていた。
 大発が近づいてきて艦も停止した。海流の流れが速く艦と大発の間が上下に揺れて危ない。
 30分以内に荷揚げしてくれ,早く出航しないと途中クララ湾に又敵艦が待ち伏せていると言う。火砲,弾薬,食糧,梱包等を投げるようにして大発に移す。汐の流れも速い。大発がコロンバン揚陸場へ着くや否や直ちに荷揚げ,こっちも同様な椰子の木丸太の桟橋である。椰子林も殆ど爆撃で倒れており,爆弾(爆撃跡?)の直径も40米はある。朝の敵機定期便の訪問に備え火砲だけはやや奥地の安全と思われる所迄運搬。
 荷物は調べて偽装する。奥地宿営地へ向かう。