昭和18年3月中旬

 レガタを駆逐艦で引き揚げ,ブインのジャングル内元歩兵の宿舎に入り,次の作戦を待つ。
 或風も無い静かな闇夜の事だった。就寝中ミリミリーッ,ザザーパリパリッと大音響がした。思わず跳ね起きたが闇夜でどうしようもない。椰子葉で葺いた宿舎の屋根を突き破り,木の枝がザワザワと突き出て来た。真っ暗闇で何事が起きたのか判らない。ローソクを灯してみると他の分隊員も外に出ている。
 宿舎前の幹の太さ径1.5米を越える大木の枝が途中で折れ,一分隊との中間に倒れたのだ。どちらにも怪我人はなかったが,本当に恐ろしいことであった。