昭和16年12月14日

 九竜の北側山岳地帯に進出。目指す香港は前方眼下。初めて見る香港は,海岸より山上に向かってビルが連なって見える。港内には日本軍の爆撃による数隻の船が沈んでおり,マストだけが見える。ちょうど日本機が一機上空に飛んでいる。香港側からは丸見えの道路,九竜の山稜線を越え西へ進む。英軍はその時どうしていたのか,射撃もしてこなかったのは今考えても不思議でならない。
 愈黒山という山の稜線手前に五中隊が砲列を敷く。S本連隊長が吾等山砲だけでなく,追撃砲・野戦重砲・臼砲・師団山砲等全砲兵を統合した軍砲兵団の司令官として指揮することになる。今やS本砲兵団総攻撃,約180門の火砲が一斉に火ぶたを切る。香港島は終日砲煙に包まれる。