なかなか改正されない建設省告示第1102号(S56)

 5年以上前に次の記事を書いた。

意味不明のコンクリート強度の告示

  昭和56年建設省告示第1102号について文句を付けた記事だが、その後2016年3月17日に改正された。改正はされたが、コンクリートの圧縮強度試験の供試体の種類に標準養生供試体が追加されただけで、私が削除して欲しい次の規定はそのまま残っている。(削除して欲しいのは「材齢が28日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値に7/10を乗じた数値以上であり、かつ、」の文言)

 コンクリートから切り取ったコア供試体又はこれに類する強度に関する特性を有する供試体について強度試験を行った場合に、材齢が28日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値に7/10を乗じた数値以上であり、かつ、材齢が91日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値以上であること。

 今回は、建築の専門家以外の読者にも、告示の規定の奇妙さを感じてもらうため、例え話にしてみた。以前にも使った「めいわくだもの」が主人公である。ただ、以前の「めいわくだもの」を読み返してみると、例え話なのに複雑すぎて全然わかりやすくなかった。そこで、今回は単純な話にしてみた。

 「めいわくだもの」の糖度試験 

 「めいわくだもの」は、甘さ(糖度)がセールスポイントの人気のフルーツである。農家は、種を播いてから91日目で果実を収穫し、出荷する。出荷前に糖度を測定して合格したものだけが「めいわくだもの」ブランドを称することができる。

 ただし、糖度測定を行った果実は傷が付くので、売り物にならない。そのため、小ぶりの測定用果実を使う。見た目が悪く商品にはならないが、低コストで、糖度の推測には十分なのである。この測定用果実には2種類ある。一つは、実際に出荷する果実とほぼ同じように成長するもので、91日目に糖度を測定する。二つ目は、熟成が早く28日目で実際に出荷する果実の91日目の糖度とほぼ同じ値に達する。これを用いる場合は28日目で糖度確認ができる。いずれの測定用果実を用いても良い。

 もし、測定用果実の糖度が不足した場合は、実際に出荷する果実から抜き取り確認をする。その果実は無駄になってしまうので、最後の手段である。

 ここまでは、普通である。だが、この後に異世界の様相を呈してくる。91日目で確認する測定用果実には奇妙な条件が付けられているのだ。91日目で規定の糖度に達していても、28日目で規定糖度の7割を超えていなければならない、という条件である。何故、そんな条件が付いているのか不明なのだが、一説によると、28日時点で7割を下回っていると、91日目で規定を満足することは難しいかららしい。確かにそういう傾向はある。あるけど、傾向と違って、91日目に糖度が十分あっても不合格になるのである。

  正確さを少々犠牲にして単純にしたが、まだまだ分かりにくいかもしれない。思い切って、2行に圧縮した。

  大相撲の新弟子検査では、身長167cm以上で合格だが、10歳の時120cm以下だったら検査時点の身長が180cmでも不合格になる。

 

 さて、私はこの規定が気になって仕方ないのだが、実害は余りないらしく、国交省へのクレームもないそうだ。現場封かん養生供試体を使わなければ済むし、材齢28日で設計基準強度の7割を下回ることはほとんどないからだ。でも、気になる。