国債を家計の借金に例えられるか?

 国債を家計の借金に例えるのは間違いだと思いますが、腑に落ちる説明がいまいち見つけられません。例えば、「国は通貨をいくらでも発行できるから借金を返せないことはない」という説明がありますが、これだけで納得する人は少ないでしょう。野放図に発行すれば貨幣の価値がなくなるだけですから、貨幣とは何かというところから説明する必要があります。ところがそういう説明をすればするほど、専門的な細部に入り込み門外漢には理解が困難になります。

 結局、理解するには頑張って勉強するしかなく、王道はないのでしょう。それでも、大雑把な骨格みたいなものだけでも簡単に説明できないだろうかと、ど素人の私が無謀にも、そして例によって例え話で考えて見ました。専門家ですら簡単に説明できないのですから、現時点の私の理解を整理したものでしかないことを最初に言い訳として述べておきます。変なところがいろいろあると思います。

■ 国債は政府や行政組織の借金ではない

 家計の借金は、その家の消費や投資のために、外部から借りるものです。しかし、国債はそういうものとは少し違うと思えるのですね。例えば、国の支出には、政府や行政の消費のためのものがあります。役所の建物のような公用財産の取得などです。しかし、それらが支出に占める比率はごくわずかです。支出の多くは、道路や公共施設のような公共財産の類です。これらは、国や行政機関が使うためではなく、国民が使うものです。

■ 自分自身への借金?

 国民が使うものへの支出のための国債は国民への借金と言えるでしょうか。借金だとしたら、政府は国民ではないのでしょうか。国民が使ったり、投資するための支出は、国民自身が負担するものです。ですから常識的には公共的な支出の財源は税金で賄うと考えられていて、国民のために使った税金を返済する必要のある借金と考える人はいません。ところが、本質的な使途は同じであるにもかかわらず、国債は借金扱いです。何故でしょうか。
 
 家計に例えれば、家族の食費を家族の誰かが家族から借りて、食べさせてあげた上に、利子をつけて返しているような奇妙なところがあります。家族のだれかではなく、家族の外部に奇特なスポンサーがいてただ飯を食わせているのでもない限り、ありえないことです。しかし、家族が外食した時、その時十分な持ち合わせがあった家族の一員が建替え払いをして、後で返してもらうという状況はあり得ます。

■ 家族全員の一部の家族への借金

 家計を支える家族が沢山いる大家族を考えます。日常的な食費などは、各人が収入に応じて家計にいれた税金のようなもので賄っています。ところが、家を建てるような大きな支出となると、新入社員の安月給の家族もいて負担出来ません。負担の分配をどうするかも揉め事の種です。一方で個人的な貯蓄が余っている家族もいるのなら、とりあえずその家族に負担してもらい、あとで返すという方法が可能で、しかも迅速に家を建てられ、家族全員がその恩恵を受けられます。

■ とりあえず内部経済に限定

 ただしこの例えは、多少修正を加える必要があるかもしれません。通常、家を建てるような大事業は、家族の外部の工務店に依頼します。しかし、国債の例えとして考える場合、家族の一員に工務店がいると考えたほうがピッタリします。つまり内部経済です。それに付随して、家族内の貸し借りは家族内でのみ通用する家族通貨のほうが良いでしょう。財務大臣の母親が家族債を発行し、貯金の余裕のある長男に買ってもらい、家族通貨でもって、工務店を営む次男に家を発注します。家族通貨それ自体に価値はなく、家族間の貸し借りの記録みたいなものです。なので、紙幣や硬貨という物体である必要はなく、帳簿への記録でも十分です。単なる貸し借りの記録ですので、通貨量の制限のようなものはありませんが、次男が現実に家を建てることができるという裏付けは必要です。

■ 母親は長男と次男の貸し借りの調整仲介役

 以上の取引で実体的に貸し借りをしているのは、長男と次男です。財務大臣の母親はその取引が場所や時間に制限されることなくスムースに行われ、家建設という生産が実現できるようにする調整仲介役です。母親が自分の化粧品を買うために借金しているわけでは有りません。家族債は経済と生産活動を促進する触媒のようなもので、それが効果を発揮すれば、実質返済されたようなものです。利息だけ受け取って、借り換えを続けても、つまり返済清算をしなくても良いのではないかと思います。そのあたりの事情は株に似ています。会社が解散されないのなら、株は売らないで持ち続けても構いません。

。もちろん、運用を間違えれば、デフレやハイパーインフレを引き起こし、家族経済を阻害しますから、母親の役割は重要です。株式会社の経営陣の役割が重要なのと同じではないでしょうか。

■ 重要なのは家族運営

 重要なのは、現在の状況で家建設という事業を行った方が良いのか、行わない方が良いのか、行うなら、どのように進めればスムースなのか、そして家族の経済と生産活動が発展するかという家族経営だと思います。それがうまくいけば、家族債の借り換えも成立し、家計の破綻の心配はありません。一方、失敗すれば、家族全員が経済的に困窮します。家計の破綻というのは、それに付随した二次的な現象に過ぎないのではないでしょうか。