信号無視の勧め

子どもの前で、信号無視して横断歩道を渡る大人がいた 
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 残念なことに、私の学生時代の知人にも平気で信号無視をする輩が居た。彼に信号無視をする理由を尋ねたことがあるのだが、

・車が来ていない
・時間の無駄
・別に迷惑をかけているわけではない

こんなふうに言っていた。言いたいことは分からないでもないのだが、だからと言って法律を無視していいわけではない。また迷惑をかけていないと言うが、信号無視を目撃した人が真似をするという可能性もある。秩序が乱れる。そうならないよう、秩序を保つために法律はある。身勝手で秩序を乱しておいて迷惑をかけていないという考えは如何なものかと。

 私も、子供の前では信号は守るように心がけています。とりあえず子供には問答無用で信号は守れと教えておいた方が安全だと思うからです。しかし、子供も警察も見ておらず、車も来ていないなら信号無視します。実際上、何も問題はないからです。このような考え方に対して、リンク先のように、「ルールは守ることが大事なのである。実害がないからといって、ルールを無視すれば秩序が乱れ、なし崩し的にルールが崩壊してしまう。」という意見もあります。確かに、子供の場合、少しでも例外を認めると「あの時は、いいって言ったじゃない」と言い出しますので、とにかく天下り的にルール遵守させた方がよいと思います。ただし、信号無視が許されるなら、殺人も許されると短絡する大人はあまりいません。大人はその程度の分別は持っており、多少の融通で秩序が乱れるということもないと思います。

 といっても、さらに次の様な反論があるかもしれません。「信号無視に実害がなく、秩序の大きな乱れを引き起こさないとしても、ルールを例外なしに守るほうがより良いのであるから、守るべきだ。」しかし、杓子定規なルール遵守は、必ずしも、より良いとは言えないというのが私が実感していることです。何も考えずに信号無視をするのは、さすがに危険すぎます。よほどの馬鹿でない限り、車が来ていないことは確認します。これに対して、ルールを守るという態度は何も考える必要がありません。ただただルール通りに行動すればよいだけです。これが時に危険を招きます。

 中学生の頃、同級生の父親が交通事故に遭いました。道路を横断しようとしたのですが、横断歩道が無かったので、わざわざ遠回りして、信号のある交差点で横断中に信号無視した車にぶつけられたのです。もちろん、その父親に落ち度はありませんが、青信号でも安全は確認しないと身の安全は図れないという教訓です。交通ルールは安全のためにあるのですが、ルール遵守してさえいれば安全が確保できるわけではありません。ところが、杓子定規にルールに従っていると、安全が保障されたと勘違いしてしまうのです。

 もちろん、安全確認もせずに赤信号に突っ込むという自殺行為は論外ですが、世の中にはそういう不注意な人も存在します。子供や子供的な人はその傾向があります。そういう人達には、天下り的にとにかくルールは守らせることが有効です。頭を使って安全確認が出来ないのなら、せめて頭を使わないでよいルールに従わせるべきです。しかし、安全確認できる一人前の大人でも、杓子定規にルールに従うばかりだと、頭が使えなくなります。「ルールを守らなけらばならないのは、ルールだからだ」と考える以上の思考力を失います。その結果、無意識に行動して安全確認を忘れてしまいがちになります。だから、時々意識して信号無視したほうが良いのです。

 無意識に惰性で行動することについて、数十年前に、次の様な趣旨の文章を書いたことがあります。

 北野たけしは「赤信号、みんなで渡れば怖くない」といったが、それはいかにも危ない。これに対して、森毅は「一人で渡れば危なくない。」と言った。この意味は、以下に述べるようなことだ。集団行動していると誰かが安全確認しているだろうと安心して、危ない行動をしがちだが、一人の行動では、怖いだけに、安全確認はするし、自分で確認するしかない。その結果、意外に安全になる。そのことを表す実例を私は見た事がある。大阪に住んでいた時のことだ。いらちなオッサンが、早く交差点を渡ろうとして、赤信号で歩き始めた。それを見て、青信号になったと勘違いした歩行者の集団がつられて渡り始めたのだ。車にクラクションを鳴らされて、その集団は驚き、やっと赤信号に気づいた。発端の張本人は赤信号だとわかっているので、車が来ていないタイミングで渡っているが、つられた連中は青信号だと安心して、危ない目に遭ったわけだ。

 集団の行動に従うことと、ルールに従うことは似たところがあります。自分自身で判断しなくても、誰かが安全確保してくれているような気分になります。頭を使わなくなるのです。交通ルールを守って事故に遭うのは本末転倒です。みなさん信号無視して頭をつかいましょう。・・・

 ・・・とかなんとか、釣りめいた詭弁を弄してしまいましたが、他人に信号無視を勧めてはいけません。ルールを守っても安全確認をしないのは、ルール違反しても安全確認するよりも、危険な場合もあるのは確かです。しかし、いうまでもなく、ルールを守って、かつ自分でも安全確認をするのが一番安全に決まっています。だから、普通にルールは守った方がよいです。ただ、大声では言えませんが、私にとってルールを守りかつ安全確認をするというのは意外に難しいです。二度手間のような気がして、結局いい加減になるのです。その結果、中学時代の同級生のお父さんみたいにならないとも限りません。いい加減にしなければよいだけなのですが、それがなかなか難しいです。

 しかも、交通ルールというものは優先順位を定め、事故が起こってしまった後の責任や賠償を明確にしているだけのところがあります。ルールを守れば責任を問われないというだけで、必ずしも安全が保証されるわけではありません。交通ルールには、自転車の車道通行など、杓子定規の遵守が危険を招くものが結構あります。このことは注意した方がよいと思います。